「表現者クライテリオン」は7月号の巻頭コラム「鳥兜」で、「国際政治学者たち」が映画監督・河瀨直美氏に対して「ヒステリックな魔女狩り」を行ったと非難しています。
しかし、河瀨氏の発言を問題視した国際政治学者のうち、東京外国語大学の篠田英朗教授、東京大学の池内恵教授の発言は、どう見ても「魔女狩り」などではないことが明白となりました。
そこで本日はもうひとりの国際政治学者、慶應義塾大学の細谷雄一教授の発言を検証します。
実は、鳥兜筆者は国際政治学者の中で、特に細谷氏を目の敵にしています。
それは、このように書いていることから明白です。
〈慶應大の国際政治学者は、「国連総会決議で賛成一四一対反対五でそのウクライナ侵略が非難され、ブチャ虐殺で国連人権理事会でロシアが資格停止された直後に『ロシアの正義』に触れるとは」と責め立てた。件の祝辞はどう読んでも「ロシアの正義」に与する内容ではなく、「ロシアの“主張するところの”正義」を読み解く努力も必要であるという程度の話だが、正義を語るのに「多数決」の印籠を必要とする御仁には、そのニュアンスが読み取れないらしい。〉
鳥兜筆者は批判対象の国際政治学者の名を一切挙げていませんが、細谷氏だけは実名こそ出さないものの「慶應大の国際政治学者」として、細谷氏のツイートの文章を引用しており、事実上の名指しで批判しています。
しかも、「正義を語るのに『多数決』の印籠を必要とする御仁」などと、悪意をむき出しにした書き方をしているのです。
しかし、この罵倒に近い批判は、果たして当たっているのでしょうか?
鳥兜筆者が引用した、細谷氏のツイートの実物はこれです。
それにしても河瀬直美監督の祝辞、なぜ人間個人にかかわる一般論に留めなかったのか。それであれば多くが共感したはず。それを、国連総会決議で賛成141対反対5でそのウクライナ侵略が非難され、ブチャ虐殺で国連人権理事会でロシアが資格停止された直後に「ロシアの正義」に触れるとは。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) April 13, 2022
鳥兜筆者はこれだけを取り出して、細谷氏を「正義を語るのに『多数決』の印籠を必要とする御仁」にしているのですが、実際には細谷氏はこの前にも後にも多くのツイートをしています。
これだけ「つまみ食い」してはいけません。
例えば河瀨氏の祝辞の後のツイートには、こういうものもあります。
ロシア軍が殺戮している多くは妊婦や子供など罪のない一般市民。他方でウクライナ軍は、自国の国土を蹂躙して、市民を殺戮するロシアの侵略軍を撃退している。この違いを見分けられない人は、人間としての重要な感性の何かが欠けているか、ウクライナ戦争について無知か、そのどちらかでは。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) April 12, 2022
これだけでも正義がウクライナにあるという、十分に説得力のある論拠になります。
他にも細谷氏は、「どっちもどっち論」がいけない理由をいくつも挙げているし、河瀨氏の発言における認識がどういけないのかも、詳しく指摘しています。
それを鳥兜筆者は、ツイートをひとつだけ前後の文脈を無視して取り出し、細谷氏が単に「国連の多数決で決まったからロシアは悪」と言っていて、それが単純で乱暴な理屈であるというように印象操作したのです。
細谷氏は河瀨氏について、
〈せっかく繊細な人間描写に拘る芸術的な仕事に携わるのであれば、自らが専門的知見をもたない国際政治や戦争について限定した話にするよりは、それにふれずに人間個人一般にとどめれば、このような批判は受けなかったはず。言葉を大切にする職業の方であるゆえ、軽率であったと思い残念。〉
というツイートまでしています。
細谷氏は河瀨氏に対して作家としての将来性まで心配しているのです。
篠田氏や池内氏よりも、ずっと河瀨氏に優しい態度を取っています。
それを鳥兜筆者は、「ヒステリックな魔女狩り」をしたとなじっているのです!
こんな卑怯なやり口があるでしょうか?
これは完全にデマ攻撃です。
言論人の風上にも置けない所業です。
こんな卑劣な人間に言論をさせてはいけないと、私は怒りを込めて訴えます!
藤井聡編集長! こんな悪質なライターは、直ちに出禁にしなきゃダメです。
二度と「発言者クライテリオン」に執筆させてはいけません!
さもないと、本当に雑誌の信頼性がゼロになっちゃいますよ!!
では次回はさらに、細谷氏が実際には何を言っていたのかを詳しく検証していきたいと思います。
鳥兜筆者がいかに細谷氏の発言を無視・歪曲し、細谷氏を「正義を語るのに「多数決」の印籠を必要とする御仁」にでっち上げたかという、その悪質極まりない実態が続々と明らかになります!
しかし、それやり始めたらあと1回や2回じゃ終わらんぞ…
【ロシベタクライテリオン論破祭り】
第1回 ウソついて逃げるクライテリオン藤井聡!
第2回 ロシアのプロパガンダを「多面的な解釈」と強弁する藤井聡!
第3回 道路交通法と国際法の区別がつかない藤井聡!
第4回 藤井聡の言う「多面的解釈の外交」とは何か?
第5回 NATOの東方拡大はアメリカの「裏切り」か!?
第6回 確かにアメリカは悪い! けど…?
第7回 ロシア経済崩壊の「主犯」は誰か?
番外編 藤井氏動画コメントに見る、クライテリオン読者・支持者の「程度」
第8回 藤井聡が依拠する、伊藤貫の「国際情勢認識」の正体
第10回 藤井聡氏に小学校の国語のテスト。
第11回 クライテリオンは朝日と産経の「悪いとこ取り」
第12回 ブチャ虐殺を「フェイク」だと思っていた藤井聡
第13回 「魔女狩り」という言論封じワード
第14回 もう一度、道交法と国際法の違いについて。
第15回 藤井聡氏の国際法軽視は西部邁氏の悪影響か?
第16回 明日よりクライテリオン論破祭り、最終章!
第17回 河瀨直美の祝辞はどう見ても「どっちもどっち論」「相対主義」(しかも日本絶対悪主義)だ!
第18回 篠田英朗氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?
第19回 池内恵氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?